木曜日, 6月 19architecture | design | art & more!

ニューヨークのSalon Art + Designから見るインテリアとしてのアート&デザインとアメリカのインテリアデザイナーの役割

インテリア・デザインとアートのフェア「Salon Art + Design」が2024年11月7日から11日まで5日間、ニューヨークのパーク・アーモリーで開催された。

「Salon Art + Design」は、マンハッタンのアッパー イースト サイドにあるパーク アベニュー アーモリーでセレクトされた国際的なギャラリーやスタジオがデザインやアートコレクションを展示するイベントで、アートとデザインの垣根を超えた珍しいフェアだ。

 
 
 
 
 
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毎年開催されるこのデザインとアートのショーケースは、かつてはマンハッタンのミッドタウンにあった武器庫だった場所で開催され、国際的な出展者が現代と歴史上の両方のクリエイターの作品を展示される。

 
 
 
 
 
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今年で13回目を迎える今回の展示会は、ギャラリー出展者数48、特別展示数7。小規模でありならもエントランスデザインの華やかさや歴史を感じさせる展示会場で、心地よい空間を生み出していた。

昨年の来場者から聞いた話では、今年はフランスからの出展者が多いのだとか。「Salon Art + Design」は、歴史的および現代的な共同デザインと美術を厳選して組み合わせることで、他のフェアとの差別化を図り続けています」とフェアサイドは述べている。

パリをベースとするMaisonjaune Studioは、希少な作品、素材、照明が絶妙にミックスされた作品を展示していた。また、このStudioでは、過去と現在が折衷的かつ意外に、そして楽しく出会う場所と定義している。天然素材を使用した照明がいくつか展示されており、暖かく、心地の良い光を発し、その中には、インゴ・マウラーが日本のうちわを起用して製作した<Uchiwaシリーズ>の「Ya ya ho」や「Hana I -1974」のあかりも見られた。キャラメル色に変色した色合いがさらに良い味を醸し出していた。

また、同じくパリを拠点とするGalerie Negropontesでは、Etienne Moyat(エティエンヌ モヤット)の木をチェーンソーで製作した力強く優美な曲線の彫刻パネルやファイバーを使ったUlrika Liljedahl(ウルリカ リリエダール)の天井から吊るされたオートクチュールのようなアート、ユニークなハイジュエリーなどのコレクションが展示された。

他、ニューヨークを拠点とするTodd Merrill Studioでは、Jamie Harris(ジェイミー ハリス)のカラフルなガラスの彫刻照明やJohn Procarioの有機的な形状のソファ、Markus Haaseの彫刻的な照明「Medusa」、韓国人アーティストYunh Wan Kim(ユン ワン キム)のハンドメイドで作られた木製の彫刻サイドテーブルなどが所狭しとスタンド内に置かれ、活気に満ち溢れていた。

 
 
 
 
 
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また、日本のギャラリーもいくつか出展されており、Onishi Galleryでは、David Hewettの金屏風が目を惹いた。

Ippodo Galleryでは、日本の繊細で巧みな技術で作られた日本工芸の極みを象徴するようなクオリティーの高い作品が多く出展され、来場者を魅了していた。

 
 
 
 
 
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また、Salon Conversationsとしてイベントが開催され、今年Salonの委員に就任した女優のジュリアン・ムーアがパネルディスカッションに参加するなど話題だった。

 

 

アメリカのインテリアとアートマーケット

アメリカのインテリアデザイン業界の市場規模は、2023年に約1,312億米ドルと推定されている。アメリカのアート市場は世界最大規模で、2023年の地域別の市場シェアは42%を占めており、2022年の取引高は302億USドルと過去最高を記録し、パンデミックから最も力強く回復した市場の1つだ。

今回のフェアは、既存のアートフェアには珍しい、インテリアとしてのアートとデザインをミックスしている点だ。完全なるアートフェアではなく、またデザインのフェアともまた違う。大きな相違点は、インテリアやデザイン製品のメーカーではなく、ギャラリーが出展している点だ。

聞くところによると、アートディーラーはデザイン系の商品を展示できず、インテリア・デザイン系のディーラーは、アートフェアには出展できず、双方のジレンマがあったという。「Salon Art + Design」はその問題を解消すべく、両業界のディーラーが出展できる珍しいフェアとなっている。

 

アメリカにおけるインテリアデザイナーの役割

今回、この「Salon Art + Design」以外にもニューヨーク市内のギャラリーをいくつも訪れた。インテリアとアートの狭間にあるようなギャラリーは多く、その境界線が曖昧なことに気づく。

また家具といっても一点もののような凝ったものやアートとの境目がないものや、それらを創作するアーティストの存在が多いのに驚く。また、それらをうまくトータルデーコーディネートして紹介する形で展示してあり、裕福層をターゲットとしたインテリアであることは間違いなく、顧客の多くはインテリアデザイナーだという。

アメリカでは不動産ディベロッパーが高級コンドミニアムを売り出す際、インテリア・デザイナーに内装や家具などのトータルコーディネートを依頼し、付加価値を付けたり、インテリアだけでなく、家具やアートまでセレクトして提案するのがインテリアデザイナーだという。

イタリアにおいて、建築家、グラフィックデザイナー、ファッションデザイナーなど、クリエイターとして往来しボーダレスに活動するような境目がないのとよく似ていて、インテリア空間を装飾する際にアートとデザインは切り離せるものではなく境目が曖昧であるのに似ている。にもかかわらず、はっきりと区分けしてしまっているフェアーやイベントが未だ存在し、それらが一般的には日本では通常である。

インテリアデザイナーとしては、「Salon Art + Design」は装飾品や家具、アートを一度に見ることができるのは非常にありがたい展示会であるには間違いない。また、顧客を連れて見に行けたり、規模感も程よいものである。13年も続くというのは、それなりの需要があっての結果なのだろう。

「Salon Art + Design」の次回開催は、2025年11月6-10日。詳細は、ホームページにて。
https://www.thesalonny.com/

文・撮影=Hiromi Kim

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